量から質へ—中国が示す「1兆元級」自動車産業計画

中国は自動車産業の高度化に向け、知能化・網聯化車両(ICV)を消費拡大の主軸に据え、2027年までに1兆元(約1,413億ドル)規模の市場創出を目指す方針を打ち出した。

新たな国内需要拡大計画では、ICVを含む三つの重点分野を「1兆元産業」として位置づけ、集中的に拡大を図る。計画は、供給と需要の適応性を高め、潜在的な消費力を引き出す必要性を強調。メーカーに対しては、単なる大量生産から、消費者ニーズに精密に応える製品開発への転換を求めている。

具体的には、100種類の代表的製品と革新的企業の育成、新技術の実証シナリオの構築、新エネルギー車(NEV)の農村部への販売拡大などが盛り込まれている。

工業・情報化部の謝元生副部長は、この方向転換を「量から質への移行」と位置づけ、「生産量の拡大から、より優れた製品づくりへ——多様化する消費者の需要に応える高品質な供給が重要だ」と述べた。

こうした政策強化は、市場が歴史的転換点を迎える中で行われている。2025年10月の新車販売に占める新エネルギー車の割合は51.6%に達し、初めて過半数を占めた。生産台数も2020年の約140万台から、2024年には1,300万台超へと急拡大している。

市場の成熟とともに消費者の嗜好は多様化している。家庭層は広さと多用途性を求める一方、若年層は音声操作やスマートコックピットを備えた「移動する生活空間」として自動車を捉える傾向が強まっている。また、アウトドア人気の高まりを背景に、急勾配を登れるモデルや航続距離1,000キロに達する電動オフロード車の需要も急増している。

さらに、乗用車の新車販売の60%以上がレベル2の先進運転支援システム(ADAS)を搭載していることが公式データで明らかになっている。中国自動車工業協会の付炳鋒副会長兼秘書長は「今後の鍵は、知能化・網聯化技術の産業応用をいかに深化させるかにある。革新的な供給によって、より広範な市場需要を喚起することが重要だ」と述べた。