元外交官、カンボジア・米国関係の「黄金の機会」を評価 合同軍事演習再開と武器禁輸解除で信頼回復へ

米国とカンボジアの合同軍事演習の再開、およびワシントンによる対カンボジア武器禁輸の解除は、両国が安全保障と貿易の分野で信頼を再構築し、協力を拡大する絶好の機会である――。カンボジア地域研究センター上級顧問で元外交官のプー・ソティラク氏(Pou Sothirak)は、こう評価した。

ソティラク氏はクメール・タイムズ紙の単独インタビューに応じ、カンボジア・米国関係の改善を歓迎した。

「これは黄金の機会です。米カンボジア関係を“通常の関係”ではなく、戦略的関係として立て直すための新たな機会です。まさにタイムリーな動きだと言えるでしょう」と強調した。

今月初め、クアラルンプールで開催された第12回ASEAN国防相会議(ADMMプラス)の場で、カンボジアのティア・セイハ国防相と米国のピート・ヘグセット国防長官が会談し、約10年ぶりに合同軍事演習「アンコール・センチネル」を再開することで合意した。米国はまた対カンボジア武器禁輸を解除し、貿易や国際犯罪対策での協力拡大にも同意した。

この動きは、10月26日にクアラルンプールで米国のドナルド・トランプ大統領の仲介により、カンボジアとタイが和平合意に署名したことを受けたものでもある。署名式にはASEAN議長国マレーシアのアンワル・イブラヒム首相も立ち会った。

ソティラク氏は、合同演習再開と禁輸解除、さらには協力強化によって、双方の信頼回復が進むと指摘した。

武器禁輸は2021年、バイデン政権がカンボジアにおける中国の軍事的影響拡大、人権問題、汚職疑惑を理由に発動したもので、今年は両国の外交関係樹立75周年の節目でもある。

同氏はまた、米国が仲介したカンボジア・タイ国境紛争の停戦と和平合意は、ワシントンが依然としてカンボジアを重要なパートナーと見なしている証左だと述べた。

「我々はアメリカの敵ではありません。友人です」と強調し、再関与は地域の平和と安全保障におけるカンボジアの役割を米国が再評価した結果だとした。

米国のASEANミッションは、今年7月のクアラルンプールでのASEAN首脳会議で、トランプ大統領とフン・マネット首相が初めて首脳会談を行ったと報告している。その際、米国は武器禁輸の解除と、2017年以来中断していたアンコール・センチネル演習の再開を正式に発表した。

一方、2017年以降中断されてきた米国との演習とは対照的に、カンボジアと中国による「ゴールデン・ドラゴン」合同演習は毎年規模を拡大してきた。

第47回ASEAN首脳会議の傍らでは、カンボジアのプラック・ソコン外相が米国のアリソン・フッカー政治担当国務次官補と会談した。ASEAN・米国ダイアログ関係の国別調整役として、ソコン外相は両国関係の一層の強化を約束した。

ソティラク氏は、関係改善の勢いは2年前に当時のロイド・オースティン米国防長官がプノンペンを訪問した際に始まったと回想。米国がインド太平洋戦略におけるカンボジアの重要性を再確認したことが転機だったと述べた。同氏は、カンボジアのインド太平洋構想への支持も戦略的関係を後押しすると指摘した。

「関係正常化に向けた正しい方向の第一歩は、合同軍事演習を正式に再開することであり、私はこれを歓迎します。安全保障面で米国との防衛外交を最高レベルで進める必要があります。米国はカンボジアの防衛能力の強化にも貢献できるでしょう」と語った。

同氏は、ヘグセット長官のカンボジア訪問の可能性が報じられていることに触れ、政府に迅速な受け入れを促した。これは関係再構築を正式に進める別の機会になると述べた。

また、米国が懸念を示し続けてきたレアム海軍基地についても透明性を高めるべきだとし、「ヘグセット長官が訪問すれば、必ずレアム基地を視察したがるはずです。基地を公開し、米海軍艦船の寄港を招待してもよい」と提案した。

依然として米国の懸念が完全に払拭されたかは不透明であり、過去数年間にわたり米側は中国の影響力拡大、とりわけ中国支援によるレアム基地拡張について懸念を示してきた。

ソティラク氏は、米国との関係深化はカンボジアの戦略的多角化にも資すると述べ、特定のパートナーに過度に依存しない外交姿勢が強まると評価した。また、現在の政権が主要国との外交・安全保障協力拡大に前向きであることは、地域での地位向上につながると強調した。

タイとの国境をめぐる緊張が高まる中、同氏は米国との強固な関係が抑止力にもなると指摘した。

「今カンボジアにとって最大の脅威は何か。それはタイです。タイが軍事力を用いて紛争を解決しようとする姿勢こそ、我が国の安全保障上の最大の脅威です。だからこそ、米国の関与は最良の抑止政策になるのです。米国という“頼れる大国”の存在を示すことができます」と述べた。

同氏は最後に、現在の情勢はカンボジア・米国関係をより深く戦略的な次元で再構築する「稀有なチャンス」だと結論づけた。