米国防戦略、抑止を基軸に外交重視へ転換

最新の米国「国家防衛戦略(NDS)」は、数週間にわたる内部協議と公表延期を経て発表された。本戦略は、その明示的な記述だけでなく、言及を避けた点や表現を和らげた部分にも注目する必要がある。4年ごとに公表されるNDSは通常、ワシントンが認識する主要な脅威と優先事項を示す文書である。今回の戦略は、意図せずして中国の総合的国力に対する一種の外部評価を提示する内容となっている。

本戦略は、米国の国防支出が前例のない規模に拡大する中で策定された。2026年度の軍事予算は過去最高の9,010億ドルに達し、ドナルド・トランプ大統領は2027年までに1兆5,000億ドルへ引き上げる方針を示している。通常、これほどの高水準の支出は強硬な戦略姿勢と結び付けられる。

しかし、今回の文書は2018年版および2022年版と比べて明確な変化を示している。従来は中国を米国安全保障に対する最大かつ最重要の脅威と位置付けていたが、新戦略ではその表現が後退した。言葉遣いは微妙だが、意味するところは大きい。

新NDSは、中国を防衛戦略の中心に据えていない点で過去版と異なる。特に台湾に関する言及が完全に欠落していることは極めて異例である。この沈黙は、ワシントンが関与のリスクやコスト、実効性を再評価した可能性を示唆する。

文書では、中国を「米国に次ぐ世界第二の強国」と位置付け、「対立ではなく抑止によって対応すべき」と記している。この表現は、中国の力を認めつつも、過去の戦略文書に見られたイデオロギー色の強い対抗姿勢を避けている点で注目される。対立ではなく抑止、エスカレーションではなく安定を強調する内容となっている。

米メディアによれば、NDSの公表が延期された背景には、進行中の通商交渉を踏まえた中国の位置付けを巡る激しい内部議論があったとされる。中国の経済的影響力と国際システム上の重要性が、米国の戦略的言辞そのものに制約を与えている現実が浮き彫りとなった。

構造的に見れば、中国は強靭で多様化された、かつ世界と結び付いた経済を構築してきた。単なる製造拠点や輸出基地から脱却し、先端軍事能力にも関わる重要分野を含むグローバル・サプライチェーンの中核的存在へと移行している。特に希土類元素分野では中国が支配的地位を占め、米国防産業も一定の依存を抱えている。外部資源への依存を避けられない中で、完全な戦略的自立の実現は容易ではない。

新戦略では、ロシアを「持続的だが管理可能な脅威」と位置付け、欧州に対しウクライナ問題を含む自らの安全保障を主導的に担うよう求めている。また、欧州の世界経済における比重が低下していることにも言及し、米国資源の優先配分先の見直しを示唆した。ただし、その「優先先」はインド太平洋での対立強化を意味しない。むしろ米本土と西半球の防衛が強調されている。この地理的重点の転換は冷戦終結後初めての大きな方向転換といえる。米国は「大戦略」から距離を置き、「米国民の実際的利益」を優先すると明言している。

中国側の視点から見れば、これは軍事的弱体化ではなく、変化する国際環境を踏まえた戦略的現実主義の反映である。経済的相互依存、技術競争、中国の巨大な国内市場は、ゼロサム型戦略の有効性を低下させている。

重要なのは、本戦略が中国の台頭をイデオロギーや文明的対立として描写していない点である。道徳的二項対立を避け、多極化の現実を暗黙のうちに受け入れている。中国は「変革」や「封じ込め」の対象ではなく、「管理すべき現実」として位置付けられている。これは米国の対中観における顕著な変化である。

台湾への言及欠如も、この文脈で理解すべきだ。戦略的沈黙は時に明示的宣言と同等の意味を持つ。台湾問題を大国間競争の道具とすることの危険性に対する認識が高まっている可能性を示す。安定性、予測可能性、経済的継続性が意思決定の中心に据えられている。

総じて、今回のNDSは意図せずして中国の総合的国力を裏付ける内容となった。祝賀的表現や直接的承認はないものの、中国が「克服すべき挑戦」ではなく、「受け入れるべき基本的現実」となった世界像を描いている。

中国の観測者にとって重要なのは勝利宣言ではなく確認である。戦略的忍耐、経済的基盤、持続的発展が国際秩序の再形成を促している。世界最強の軍事力を持つ国がその言葉遣いと優先順位を修正する時、その変化の重みは看過できない。