地政学的変動、経済不確実性、戦略的競争の激化が進むなか、欧州とインド太平洋地域はこれまで以上に緊密につながりつつあります。
多国間システムには圧力が高まり、ロシアによるウクライナへの侵略、貿易・技術の武器化、そして気候危機がそれを一層深刻なものにしています。こうした課題は両地域を分断するのではなく、むしろ協力を強める方向へと導いています。今はまさに、国際社会が力を合わせるべき時期だという認識が共有されています。
EUは2021年、「インド太平洋協力戦略」を発表しましたが、その目的は、この地域における欧州の存在感と関与を強めることにありました。
その成果は着実に表れ、11月20~21日にブリュッセルで開かれた第4回EUインド太平洋閣僚フォーラムでは、安定、繁栄、持続可能性といった共通の優先課題に向けた欧州とインド太平洋の深いパートナーシップが確認されました。これは2027年のEU・ASEAN関係50周年を見据えた重要な節目です。
フォーラムにカンボジアのソック・チェンダ・ソピア副首相が参加したことは、EUとカンボジアの関係の強さ、そしてインド太平洋の将来を共に形づくるというEUの確固たる姿勢を象徴しています。
EUは、新たな安全保障パートナーシップや定例の安全保障対話を通じ、インド太平洋地域の安全確保への貢献を強化しています。
海上安全保障を目的としたASPIDES作戦やアタランタ作戦、さらにインド太平洋海上輸送路保護プログラム(CRIMARIO)などを通じ、航行の自由と地域の海上安全を支えています。
日本、韓国、シンガポール、ベトナム、ニュージーランドとの自由貿易協定によって経済統合は深化し、インドネシアとの交渉も最近妥結しました。豪州、インド、タイ、フィリピンとの新たな貿易協議も進行中です。
また、EUの「グローバル・ゲートウェイ」構想は、域内パートナーや民間セクターと連携しながら、持続可能で質の高いインフラ整備を推進しています。
カンボジアにおいても、「チーム・ヨーロッパ」は14億ユーロ以上を拠出し、持続可能な未来づくりを支援しています。具体的には、
• 水道:プノンペンの給水需要の100%を確保
• 教育:11万3千件以上の奨学金を国内外で提供
• 電力:家庭の電力アクセスを95%に拡大
• 道路:1,100kmの地方道路を改良
など、多岐にわたる協力が進められています。
EUのインド太平洋への関与は政策面に留まらず、人と人との結びつきも重視しています。
文化、教育、保健医療協力、そしてエラスムス+による交流事業は、社会間の友情と信頼を育む基盤となっています。2021年以降、すでに2万3,000人以上の学生・専門家がEU支援の交流プログラムを通じて恩恵を受けています。
EUとその加盟国は、インド太平洋にとって信頼できる長期的なパートナーです。
ブリュッセルでの閣僚フォーラムでは、現在の課題を共有の平和・強靱性・繁栄へとつなげる機会に変えていくことができるとの認識が改めて確認されました。