米国企業に対し、カンボジアのエネルギー分野の潜在力を活用するよう促す

アメリカ商務省の国際貿易局(ITA)は、カンボジアの急成長するエネルギー分野には大きな潜在力があるとして、アメリカ企業に対し事業展開を積極的に検討するよう呼びかけました。発電や送電設備、エネルギー貯蔵、効率化技術、さらにオフグリッド型の太陽光システムなど、多様な分野で機会があるとしています。

これは、カンボジアのエネルギー状況と今後の方向性を評価した最新の声明で示されたもので、ITAは海外での米国企業の活動支援や輸出促進、公正な貿易環境づくりなどを担っています。

声明によりますと、カンボジアでは高圧送電網の整備が限られていることや輸入ディーゼルへの依存などから、地域内でも比較的高い電力料金が続いています。地方部ではプノンペンと比べて電力の安定性が低く、いまも発電機に頼る地域が残っています。

政府は2020年までに全ての村の電化、2030年までに90%の世帯で安定した電力アクセスを確保する目標を掲げていますが、達成には課題があります。2024年末の時点で、地形の問題などから120の村が未電化で、世帯レベルの接続率はおよそ88.4%となっています。

ITAは、カンボジアの電力供給体制について、発電と販売を行う独立系発電事業者と、発電から小売りまで一体的に行う統合ライセンス事業者の2種類に大別されると解説しています。電源構成は水力と石炭が中心で、太陽光、重油、バイオマスがこれを補っています。また、乾季に水力発電が減る時期には、タイやベトナム、ラオスから電力を輸入しています。

2024年時点で、カンボジアの発電容量は合計5044メガワット、輸入分が672メガワットで、水力が1796メガワット、石炭が1300メガワット、重油が400メガワット、太陽光が827メガワットを占めています。2025年には6044メガワットへ拡大すると見込まれています。

政府は2022年から2040年にかけての電力開発計画で、2024年以降の新たな石炭火力発電の建設を行わない方針を示し、国内外の再生可能エネルギーを中心とした電源構成への転換を進めています。中でも屋根置き太陽光発電の普及を重視していて、2023年に全国ガイドラインを導入し、2024年に改訂、2025年の導入枠を30メガワットと定めています。中規模・大規模システムには1kWhあたり0.037〜0.060ドルの補償料金が設定され、小規模システムは対象外としています。

再生可能エネルギーの比率は現在の62%余りから2030年に70%まで高める計画です。2024年9月には、閣議が57億9000万ドル規模の計23件のエネルギー事業を承認し、太陽光発電所12か所、風力発電6か所、バイオマスと太陽光の混合設備、LNG発電所、水力発電所、大規模な蓄電設備2件などが含まれています。バッテリーや揚水発電による蓄電は2000メガワット規模まで導入される見通しで、戦略的な重点事項となっています。

一方で、発電設備と送電網の拡張には90億ドルが必要とされ、2025年までに確保されている資金は25億ドルにとどまっています。このためITAは、アメリカ企業に対し、カンボジア電力公社や世界銀行、アジア開発銀行が公表する案件情報を注視するよう促しています。ディーゼル発電機やオフグリッドシステム、最新の再生可能エネルギー技術への需要が続くとしています。