中東危機、カンボジアの投資と観光に打撃の懸念

中東で続く紛争の激化を受け、カンボジアの企業界は神経をとがらせている。米国とイスラエルによるイラン攻撃を背景に、アジア市場では原油価格が急騰、株価が下落しており、その余波がカンボジア経済にも及ぶ可能性がある。

カンボジア投資マネジメント・ホールディングス(CIM)のグループCEO、アンソニー・ガリアーノ氏は、米国、イスラエル、イランの対立は中東における大規模な軍備増強や米政権の強硬な要求を背景に、市場ではある程度予想されていたと指摘した。

同氏はクメール・タイムズ紙に対し、紛争が長期化すればカンボジア経済は大きな影響を受け、特に縫製、観光、不動産、銀行の各業界が打撃を受ける可能性が高いと述べた。「燃料価格の上昇や世界的なサプライチェーンの逼迫により製造業が混乱し、輸送費や原材料コストの上昇、インフレ加速や失業リスクの高まりを通じて世界経済が減速する恐れがある」と警告した。

一方で、直近のイランとの12日間の衝突では原油価格が一時20%上昇したものの、その後は安定したとし、現在の約7%の上昇は比較的穏やかな市場反応だとの見方を示した。

石油供給そのものが最大の懸念ではないとしながらも、ホルムズ海峡を通過するエネルギー輸送の戦略的重要性を強調。同海峡は世界的な要衝であり、イラン革命防衛隊が日曜日に「事実上閉鎖された」と宣言したと伝えられている。

観光分野についても、空域閉鎖や航空便の欠航、エネルギーコスト上昇、経済減速や安全保障上の懸念が重なり、新たな打撃を受ける可能性があると指摘。複数の国際航空路線や主要ハブ空港が閉鎖され、広範な地域で移動が困難になっている。

紛争が長期化して国内経済が弱体化すれば、外国人投資家を中心に回復基調にあった不動産市場にも影響が及ぶ恐れがある。製造業や観光、不動産の減速は不良債権の増加につながり、銀行部門にも課題をもたらす可能性があるという。

カムテック大学中国・ASEAN研究センター副所長のトン・メンダビッド氏も、中東紛争はカンボジアが直面する既存の経済的圧力を強めていると分析。特に海上貿易の混乱が大きな影響を与えるとし、ホルムズ海峡が封鎖されれば世界的な原油価格の急騰と供給不足を招き、広範な経済的影響が及ぶと警告した。

原油価格の上昇は製造コストや海上輸送費、物流費の増加に波及し、企業と消費者双方に負担をもたらす可能性がある。また、戦争や原油市場の不安定さにより、資本の流れがリスク回避姿勢に左右されやすくなるとも指摘した。

対策として、政府は最悪の事態を想定し、燃料価格の安定化策や石油輸入に対する税制優遇措置の拡充を検討すべきだと提言。物流や海運など石油依存度の高い分野への支援策も必要とした。さらに、食料価格の監視や戦略備蓄の確保、安定的な金融政策と明確な情報発信が経済成長と信頼維持に不可欠だと強調した。

社会経済研究者のチェイ・テック氏は、ホルムズ海峡の閉鎖により特に石油輸送を中心とした物流が影響を受け始めていると指摘。仮に紛争が拡大し、パキスタンとアフガニスタン、あるいは朝鮮半島や台湾を巡る緊張が高まれば、影響は世界全体に波及しかねないと述べた。

カンボジア華人商業協会(CCCA)の副会長ロル・ヴィチェット氏は、紛争が長期化すれば原油価格と生活費の上昇を招くと懸念を示した。外国人投資家は「様子見」あるいは「実行前の一時停止」といった姿勢を取る可能性があり、これが国内総生産(GDP)見通しにも影響を与えかねないと述べた。

カンボジア外務国際協力省も声明で、中東情勢を深刻な懸念をもって注視していると表明。関係各国に対し、市民の生命と地域の平和を損なうさらなるエスカレーションを避けるため、最大限の自制を求めた。