カンボジア政府が中国人観光客に対するビザ要件を緩和したことを受け、観光業界から期待の声が一段と高まっている。観光省は1月15日付の通知で、中国(本土)、香港、マカオの国民に対し、2026年6月15日から10月15日までの4か月間、14日間のビザ免除入国・滞在を認める方針を明らかにした。
観光省関係者によると、この措置は試験的なもので、成果次第では延長や見直しが検討される可能性がある。タイとの国境衝突の影響で観光客数が減少する中、中国人観光客の呼び込みによって市場の回復を図る狙いだ。
カンボジア国立銀行(NBC)の最近の報告によれば、2025年の外国人観光客数は560万人と、前年の670万人から16.9%減少した。一方、観光収入は37億ドルで、2024年比3%増となったものの、当初の期待を大きく下回った。
国別では、ベトナムが全体の21.9%を占め最大の訪問国となり、中国が21.6%で2位、タイが18.4%で3位となった。業界データによると、2025年にカンボジアを訪れた中国人観光客は約120万人で、前年比41.5%増と大幅に伸びた。
一方、ベトナムからの訪問者数は122万人と依然首位を維持したものの、前年比8.8%減少。タイからの観光客は国境緊張の影響で52.4%減の102万人に落ち込み、3位に後退した。
こうした状況を受け、中国人向けビザ免除措置は観光市場活性化の切り札として歓迎されている。カンボジア旅行代理店協会(CATA)のチャイ・シブリン会長は、「歴史的な節目」と評価し、中国は依然として主要な観光市場の一つだと強調した。
同氏はクメール・タイムズ紙に対し、「2025年後半に冷え込んだ訪問者数への直接的な対応だ」と述べ、ビザ免除とEアライバルカードによる簡素化された入国手続きが、観光客数の回復と投資家信頼の向上につながるとの見方を示した。
「これは観光回復だけの問題ではない。入国手続きの簡素化は、特に中カンボジア産業開発回廊で活動する海外投資家の意思決定を加速させる」と語った。
一方で、同氏は中国市場に依存しすぎない姿勢も強調し、今回の試験導入は将来的な政策改革の検証だと指摘。成功すれば、日本、欧州、西側諸国など高付加価値市場にも段階的に拡大される可能性があると述べた。
国際ビジネス商工会議所(IBC)副会長で、タリアス・ホスピタリティ社CEOのアルノー・ダルク氏も、今回の措置を「現実的かつ合理的」と評価した。中国は世界最大級のアウトバウンド市場であり、ビザ要件は短距離旅行や団体旅行における大きな障壁だと指摘する。
ただし、同氏は訪問者数の増加だけを目的とすべきではないと警告し、滞在日数や消費額、主要都市以外への分散といった「価値創出」が重要だと強調した。「ビザ緩和はあくまで手段であり、それ自体が戦略ではない」と述べた。
また、カンボジア華商会のロル・ヴィチェト副会長は、今回の決定を「画期的な前進」と評価し、試験期間後には日本、欧州、米国、英国などへの拡大も検討される可能性があると述べた。
さらに、インド商工会議所(IBCC)のバブーラル・パリハル会長は、この措置を歓迎しつつ、インド国民への拡大も要請。ニューデリーおよびコルカタからプノンペン、シェムリアップへの直行便就航を背景に、インド人観光客の関心が高まっていると指摘した。
現在、カンボジアはASEAN諸国のほか、モルディブやセーシェルの国民に対し、14~30日間のビザ免除を提供している。
各種研究でも、ビザ免除や要件緩和が観光客増加に直結することが示されている。国連世界観光機関(UNWTO)などは、ビザ手続きの簡素化が国際観光客数を5~25%押し上げる可能性があると分析しており、中国、マレーシア、ベトナムなどの事例も、その効果を裏付けている。
専門家は、ビザ政策は航空便の拡充やプロモーション、価格競争力の向上と組み合わせることで、より大きな効果を発揮すると指摘する。2026年に向け、カンボジアが観光回復と市場多様化を実現できるかどうかは、こうした包括的な戦略にかかっている。