カンボジア、11億ドルの自動車バブル:中間層が「米国製」と「中国製」へ急シフト

2025年、カンボジアは乗用車購入に11億ドルを費やし、地域経済の逆風をものともせず、国内自動車市場に構造的な変化が起きていることを示した。輸入額が前年比60%増となった背景には、従来の高級車ブームだけでなく、中間層が中古車のグレーマーケットから米国製SUVや中国製電気自動車(EV)への移行を急速に進めていることがある。

税関総局(GDCE)の2025年最終報告によると、乗用車の輸入額は前年比687百万ドルから11億ドルへ急増。また、自動車部品の輸入も215%増の3億3,000万ドルを突破した。この数字は単なる輸入台数の増加ではなく、消費行動そのものが変化していることを示す。数十年間続いた中古日本車の dominance が揺らぎ、認可された“ゼロマイル”の新車が米国と中国から大量に流入している。

地政学的ショールーム
輸入額の急増は、中間層消費者への「両面攻撃」とも言える動きを反映している。
一方では、米国勢が上位中間層を確実に取り込み、フォードが主導。2025年8月1日、米国製品の輸入関税撤廃により、価格競争力を獲得した。プルサットの現地組立工場の年産能力は1万台に拡大し、新車市場の20〜25%を占める見込み。ローカル組立のフォード・レンジャーは、従来のグレーマーケットのトヨタ・タコマに代わり、中間層の標準ワークホースとなっている。

他方、中国勢はBYDを中心に急速に拡大。2024年のEV登録台数が620%増となった勢いは2025年も加速し、10月までに全国で1万台を突破した。都市部の通勤用として「中国製」が選ばれる一方、米国製は平均取引価格を押し上げ、従来2万ドル程度の中古車を購入していた層が5万~7万ドルの新車へとアップグレードする動きが見られる。

組立革命
カンボジアにおける「ラグジュアリーギャップ」は、スクーターとセダンの差だけではなく、グレーマーケットと認可ディーラーの二極化によって拡大している。部品輸入の急増は国内組立の急拡大を裏付ける。

RMA(フォード)やトヨタ通商など大手は、輸入コストを回避するため、CKD(完全組立キット)の現地生産を加速。中国ブランドもインフラ整備を進め、BYDは2025年末、シアヌークビル経済特区で年産1万台の新工場を稼働させ、税制優遇付きEVを市場に供給。独立系ディーラーが扱う老朽化した内燃機関車への圧力も増している。

ローンでのアップグレード
米中新車へのシフトは、カンボジアの消費者金融市場にも影響を及ぼしている。中古車市場では現金取引が中心だったが、新車市場ではローン利用が拡大。輸入支出の前年同期比4億1,500万ドル増加は、銀行やマイクロファイナンス機関が自動車ローンの拡大を通じて認可車需要を取り込もうとしていることを示す。

超高級車(ロールスロイス、ランボルギーニなど)も注目されるが、この11億ドル規模の消費拡大の主因ではなく、中間層が中古車市場を抜け出し、米国製の頑丈さか、中国製の革新性かを選択していることが主要因となっている。

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