カンボジア経済、2025〜26年は「回復力と脆弱性が併存」 成長率は4%と予測

メコン・ストラテジック・キャピタルが公表した「カンボジア経済アップデート2025年12月版」によると、2025年のカンボジア経済は強い国内消費と製造業輸出が、タイ国境紛争、帰国労働者の急増、不動産セクターの継続的なストレスといった大きなショックを相殺し、回復力と脆弱性が混在する状態にあるという。

同報告書は、2025年と2026年の経済成長率をいずれも約4%と予測している。3か月前の見通し(約3%)よりやや改善したものの、依然として厳しい経済環境が続いていると指摘。地域情勢の緊張、詐欺センターに関する評判悪化、不動産市場の深刻な歪みが引き続き重荷になっている。

最も深刻な圧力の一つは、タイからのカンボジア人労働者の大量帰国である。報告書は、すでに90万人以上がタイを離れたと推計し、年間約15億ドルに相当する送金額が大きく落ち込むと分析。約11.25億ドルが失われ、短期的にはGDPの約1.8%に影響する可能性を示した。帰国労働者の吸収には緊急の政策対応と雇用創出が必要だとしている。

観光業も打撃を受けている。詐欺センター問題による評判悪化に加え、国境緊張でさらに悪化。アンコール遺跡のチケット販売は過去6か月で20%減少、東アジアからの訪問者も依然としてコロナ前を大きく下回る。メコン・ストラテジック・キャピタルは、国境問題に起因する観光減少が15%に達し、短期GDPの約2%に相当すると見積もっている。

政府が進める詐欺センター取り締まりは短期的にGDPの1〜2%の影響があると試算されるが、長期的には経済の健全性確保に不可欠と強調した。

一方で、国内経済は予想外の底堅さを見せている。
• VATと物品税収:2025年9月時点で前年比23%増
• 車両輸入:50%増
• 製造業輸出:15.2%増
• 資本財輸入(機械・電気機器など):93%増

これらは産業投資の勢いが続いていることを示している。

しかし、不動産市場は依然として大きな足かせとなっている。売れ残り住宅は約10年分の供給量に達し、銀行セクターへの悪影響も拡大。106億ドル(全融資の17.5%)が延滞または再構築中とされ、市場の早期回復は見込みにくい。

財政面では、同社は「カンボジアには大規模な借入余力がある」と指摘。GDP比18.8%という低い公的債務水準、低金利、長期償還を踏まえ、より積極的な財政刺激が可能だとした。

同報告書は、カンボジアの人口構造の優位性も強調。中国、タイ、ベトナムが労働人口減少に直面するのとは対照的に、カンボジアの生産年齢人口は2050年まで堅調に増加し続けると予測され、消費・労働供給・製造業競争力を支えるとした。

総じて、今後2年のカンボジア経済は「二つの速度」で進む可能性が高いとしている。つまり、強い消費と輸出が、国境緊張、市場不安、不動産不況の悪影響を相殺する形で推移すると予測した。成長率は2025年と2026年に4%前後にとどまる見込みだが、政府が財政余力を活用すれば、さらなる悪影響の緩和が可能だとしている。

専門家、地政学的緊張下での(安定)を評価も、長期的な強靭性強化を警告

最近の地政学的緊張にもかかわらず、カンボジア経済はおおむね安定を維持しているが、圧力が続く場合は政府が迅速に長期的強靭性を高める必要がある—と有識者が警告した。

プノンペン王立大学 国際研究・公共政策研究所(IISPP)の講師、トン・メンデイビッド氏はクメールタイムズの取材に対し、これまでカンボジアの主要経済基盤が外部ショックに耐えてきたのは、強固な基礎、迅速な政府対応、多様化した経済パートナーに支えられているためだと指摘した。

「カンボジアは、突発的な地政学的ショックを受けても安定を保てることを示しました。貿易、エネルギー、投資といった基盤は揺らいでいません。これは、強い経済基盤や迅速な政府支援政策、そして単一の国に依存しない多様な経済パートナーのおかげです」と述べた。

しかし同氏は、こうした施策はあくまでも**「短期的な対応」**であり、緊張が長引けば家計や企業への圧力が増すと警告。
「もし緊張が続けば、経済的な圧力は蓄積します。政府は持続可能で強靭な政策を講じる必要があります」と強調した。

特に懸念されるのは、労働者とサービス産業への影響だという。タイからの帰国者増加は、送金減少と家計消費の停滞という重大なリスクをもたらす。

「タイで働く多くのカンボジア人が帰国し、送金が減れば家計消費が弱まります。政府は日本や韓国など、ほかの就労先を重視した移住政策を整備するべきです」と述べた。

観光業も依然として、渡航警告や地域不安の影響を受けやすい状態が続いている。