カンボジアとタイの国境で再び武力衝突が激化する中、フン・セン上院議長が戦略的軍事指揮の役割に復帰した。緊張が続く状況にもかかわらず、同氏は本日タイで開幕する第33回東南アジア競技大会(SEA Games)へのカンボジア代表団の参加を予定通り行うと明らかにした。
五つ星大将として知られるフン・セン上院議長は昨日、元国防相ティア・バン将軍、毛ソファン将軍(カンボジア王立軍副総司令官兼陸軍司令官)らとのテレビ会議の様子をSNSに投稿した。
メッセージの中で同氏は、日曜日以降タイ側があらゆる兵器を使用してカンボジア領内に向けて攻撃を続けているとし、前線部隊に対し「最大限の忍耐」を求めた。タイ側の狙いは、カンボジアに反撃させ、停戦およびカンボジア・タイ和平声明を崩壊させることにあると指摘した。
「反撃すべき(レッドライン)はすでに定められている。司令官は全階級の部隊長や兵士に対し、これを徹底して共有するよう求める」と述べた。
さらに、フン・セン上院議長は地域当局に対し、戦闘地域から避難する住民の支援に全力を尽くすよう指示した。
「私は他の公務をすべて中止し、首相とともに武装勢力の指揮に当たる。面会ができなくなった国内外の来客には理解を求めたい」と述べた。
こうした状況下でも、カンボジアは今年のSEA Gamesをボイコットしない方針だ。「第33回SEA Gamesに参加するカンボジア選手には、通常どおり競技を続けるよう求める」と述べた。
一方、カンボジア国防省は昨日朝、タイ軍が前日の軍事衝突後に国境全域で大規模かつ組織的な攻撃を開始したと発表。午前4時から11時にかけて、小火器、機関銃、戦車、迫撃砲、155mm砲、化学煙幕、そしてF16による空爆とみられる攻撃が続いたという。
戦闘は主要国境地点に拡大し、オッダーミーンチェイ州とプリアヴィヘア州で民間人の負傷、住宅の破壊、大規模避難が報告されている。
カンボジア側はタイの行動を「非人道的」と厳しく非難し、米国のトランプ大統領とマレーシアのアンワル首相が立ち会った10月26日の和平合意に対する明白な違反だと指摘。さらに、タイが偽情報を流布しているとし、国際社会に対してタイを追及するよう求めた。カンボジア政府は反撃しておらず、平和的解決への姿勢を維持していると強調した。
アンワル首相は国境での武力衝突の拡大に深刻な懸念を示し、両国関係安定化に向けた長年の努力が後退しかねないと警告。犠牲者の遺族に哀悼の意を表し、両国に「最大限の自制」を呼びかけた。
「マレーシアは地域の安定のため、冷静化と事態悪化の回避に向けた措置を支援する用意がある」と述べ、ASEANとしても対立の連鎖を許容できないと強調した。
カンボジア王立アカデミー国際関係研究所のキン・ピア所長は、国境での暴力がすぐに収束する見通しは薄いとの見方を示した。
「タイは明らかにカンボジアとその国民に対し攻撃的態度を示しており、国際社会や主要国の勧告も無視している」と述べ、「軍事的にも経済的にも小国であるカンボジアが、先にタイを攻撃して暴力を誘発する理由は全くない」と指摘した。