カンボジアのオウン・ポーンモニロット経済財務相は、米国による関税賦課および国境情勢の緊張を受け、同国の2025年の経済成長率見通しを従来の6.3%から 5.2% へ下方修正したと発表した。2026年の成長率はさらに減速し 5% になると予測されている。同相は先週金曜日、2026年国家予算案の審議・採択に際して国会で説明した。
「この緩やかな成長減速は、米国がカンボジア産輸入品に対して相互関税を導入した影響と、カンボジア・タイ間の陸路国境が長期間閉鎖されていることが原因です」と同相は述べた。
一方で、輸出志向型産業に加えて、国内消費の堅調な伸びや国産品利用の拡大傾向が成長を支え、全体としては良好な成長モメンタムを維持しているとも強調した。
米国は 8月1日付でカンボジアからの全輸入品に19%の関税 を課している。
副首相も兼任するポーンモニロット氏は、2026年の国内総生産(GDP)は 538億ドル に達し、1人当たりGDPも翌年には 3,020ドル に上昇する見通しだと述べた。また、国際商品価格(特に燃料価格)の安定や国内消費の良好な傾向により、2026年のインフレ率は 2.8% にとどまると予測した。
カンボジア経済は主に、縫製品、履物、旅行用品の輸出、観光業、農業、不動産・建設分野に依存している。
カンボジア王立アカデミー傘下のシンクタンク、国際関係研究所のキン・ペア所長は、米国の関税措置と国境緊張による減速に対応するためには、市場の多角化、産業基盤の拡大、特定の国や産業への過度な依存の是正が不可欠だと指摘する。
「RCEP(地域的な包括的経済連携)とカンボジア・中国自由貿易協定(CCFTA)の活用が重要です」と同氏は水曜日、通信社の取材に答えた。「RCEPはより広い地域市場へのアクセス、関税引き下げ、通関手続きの円滑化を提供し、縫製、農産品、軽製造業の輸出を下支えします。」
「一方、CCFTAは、特に農産加工品や高付加価値農産物などで、中国の巨大市場への優遇アクセスをもたらします」と同氏は付け加えた。
ペア氏は、成長モメンタムの維持には、アグリテック、再生可能エネルギー、物流、デジタルサービス、付加価値製造業などの戦略分野を優先すべきだと述べた。また、「食料・エネルギー安全保障の強化、国内サプライチェーンの強靱性向上、人的資本(技能、イノベーション、研究)への大型投資は、長期的な競争力構築と外的ショックの緩衝につながる」と指摘した。
プノンペン王立大学国際研究・公共政策学部の講師、トン・メンデイビッド氏も、水曜日のインタビューで、今回の成長減速は地域貿易枠組みへの依存強化の必要性を示していると述べた。
「ASEAN、東アジア、中東、ユーラシアへ輸出市場を多角化することで、米国や欧州連合への依存を減らし、地域サプライチェーンへの統合、外国直接投資の誘致、高付加価値生産への移行を強化できます」と同氏は語った。
さらに同氏は、「RCEPとCCFTAによって広がる地域市場アクセスと低い貿易障壁を活用し、カンボジアは縫製以外にも、電子産業、農産加工、グリーン技術などの分野で投資拡大が可能だ」と述べた。
メンデイビッド氏は、これらの効果を最大限活かすためには、税務行政、インフラ、人材育成、ビジネス環境の改善を引き続き進め、貿易協定を長期的かつ強靱な成長につなげる必要があると結んだ。